沖縄の染物と織物は、古くから受け継がれてきた伝統的な技法と、沖縄の豊かな自然や文化が融合した、唯一無二の芸術作品です。
さまざまな地域、島々のなかでも、代表的な15種類の染め物・織物の特徴と歴史を一覧で解説します。
琉球紅型(りゅうきゅうびんがた)
琉球紅型の歴史は、13世紀頃にまで遡るといわれています。琉球王国時代には、王族や貴族の衣装や装飾品として、琉球紅型が使用されていました。また、琉球王国の貿易によって、琉球紅型は日本本土や東南アジアにも広まりました。
明治時代になると、琉球紅型は、洋装の普及や化学染料の導入によって、衰退し始めます。しかし、第二次世界大戦後、琉球紅型の伝統を守り継ごうとする動きが活発化し、現在では、沖縄を代表する伝統工芸品として、その地位を確立しています。
- 鮮やかな色彩
琉球紅型は、植物や鉱物などの天然染料を用いて染色するため、鮮やかな色彩が特徴です。特に、赤や黄色は、沖縄の太陽の光を、青や緑は、沖縄の海や山を表現しています。
- 繊細な模様
琉球紅型の模様は、手作業で丁寧に描かれます。紅型の模様は、特に繊細で、その美しさに魅了される人が少なくありません。
- 豊かな自然を映し出す
琉球紅型の色彩や模様は、沖縄の豊かな自然を映し出しています。紅型の赤や黄色は、沖縄の太陽の光を、青や緑は、沖縄の海や山を表現しています。
琉球紅型の魅力は、その鮮やかな色彩と繊細な模様にあります。琉球紅型は、沖縄の豊かな自然と伝統文化を象徴する、唯一無二の染物です。
琉球藍染(りゅうきゅうあいぞめ)
沖縄に自生する琉球藍(りゅうきゅうあい)という植物から作った染料を使い、独特な藍色の染物を作り出します。
琉球藍染の魅力は、その独特の藍色にあります。琉球藍の藍色は、本州で作られる藍染の藍色とは異なり、海の色とも空の色とも違う、奥深い色合いです。
また、染め方によって、グラデーションや絞りなどの様々なデザインを表現することもできます。
葉や茎から抽出した染料は、空気に触れると酸化して発色し、深い藍色になります。この藍色は、海の色とも空の色とも違う、独特の深みと奥行きがあります。
現在でも、沖縄県内には多くの藍染工房があり、琉球藍染の製品が作られています。藍染のシャツやスカート、ストール、バッグなど、さまざまな製品が販売されています。
ウージ染め(うーじぞめ)
ウージ染めとは、ウージという植物から作った染料を使い、黄金色や緑色などの優しい色合いの染物を作り出します。
ウージは、沖縄で広く栽培されているサトウキビのことです。
葉や穂を煮出して染料を作り、布や糸に染め付けます。染液につける時間や、葉を刈り取る季節によって、色合いが変化します。
琉球藍染は空気に触れて酸化して発色するのに対し、ウージ染めは加熱によって発色します。
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琉球絣(りゅうきゅうかすり)
琉球絣(りゅうきゅうかすり)とは、沖縄県で作られる絣織物のことです。主に絹糸や麻糸を用いて、草木染や化学染で染色された糸で織られます。
- 沖縄の自然や歴史、文化を象徴する柄や模様が豊富にある
- 手作業で丁寧に織り上げられた、繊細で美しい織り
- 草木染や化学染など、さまざまな染料を用いた、豊かな色彩
絣とは、糸の部分的に染め残して織り、模様を出す織物のことです。
琉球絣の文様は、沖縄の自然や歴史、文化をモチーフにしたものが多く、さまざまな種類があります。
琉球絣は、一反織るのに数ヶ月から数年かかると言われており、その手間と時間をかけた、貴重な織物です。現在でも、沖縄県内には多くの琉球絣の工房があり、職人たちが伝統の技を守り続けています。
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首里織(しゅりおり)
首里織(しゅりおり)は、沖縄本島で作られる伝統的な織物です。沖縄を代表する伝統工芸品の一つであり、2004年に国の重要無形文化財に指定されています。
- 絹糸や麻糸を用いて、草木染や化学染で染色された糸で織られる
- 平織や絣、模様織りなどのさまざまな織り方がある
- 伝統的な琉球の文様や、現代的な文様など、さまざまな文様がある
首里織の代表的な種類としては、以下のようなものがあります。
- 花織:琉球王朝時代から伝わる、伝統的な織物。琉球の花や草木をモチーフにした、美しい文様が特徴。
- 道屯織:琉球王朝時代には、王族や貴族の官衣として用いられていた、高級な織物。平織の一種で、両面から同じ模様が見えるのが特徴。
- ミンサー:琉球王朝時代には、庶民の間で広く用いられていた、日常着の帯。絣模様が特徴で、さまざまな文様がある。
宮古上布(みやこじょうふ)
宮古上布(みやこじょうふ)とは、沖縄県宮古島で作られている上布と呼ばれる麻織物の一種です。
上布とは、上質な麻糸で織られた織物の総称で、宮古上布は、その中でも最高級品に位置づけられています。
- 苧麻(ちょま)という麻の繊維で作られた糸で織られる
- 琉球藍で染められる
- 細い糸で織られるため、透き通るような薄さがあり、軽くしなやかな風合いがある
- 絣(かすり)模様が美しい
宮古上布の歴史は古く、1200年以上前から織られていたと言われています。琉球王朝時代には、王族や貴族の衣装や、神事や儀式に用いられる装束などに用いられていました。
現在でも、宮古島には数十軒の宮古上布の工房があり、職人たちが伝統の技を守り続けています。宮古上布は、沖縄を代表する伝統工芸品であり、その美しい織りと色彩は、世界中から高い評価を受けています。
久米島紬(くめじまつむぎ)
久米島紬とは、沖縄県久米島町で作られる絹織物のことです。2004年に国の重要無形文化財に指定されており、沖縄を代表する伝統工芸品です。
- 蚕から取った真綿でつむいだ糸を原料糸として、天然の草木、泥染めによって染色します。
- 織りは、手投杼を用いて丹念に手織りで織り上げます。
- これらのすべては伝統を踏襲し、一貫した手作業を一人の織子が行うところにあります。
久米島紬の織りは、糸紡ぎから仕上げまでの全行程を、一人の職人が一貫して行うため、その技術は非常に高度です。
久米島紬の色合いは、天然の草木や泥染めによって染め上げられたものが多く、落ち着いた色合いが特徴です。また、絣柄や模様織りなどのさまざまな織柄があります。
久米島紬は、沖縄の自然や歴史、文化を象徴する織物です。その美しい色合いと風合いは、人々を魅了し続けています。
知花花織(ちばなはなおり)
知花花織(ちばなはなおり)は、沖縄県沖縄市知花で作られる織物です。琉球王朝時代から伝わる伝統工芸品で、国指定伝統的工芸品に指定されています。
知花花織の特徴は、琉球藍で染められた紺地に、絣や格子柄を組み合わせた、独特の色合いと柄にあります。
模様は、伝統的な紅白の浮模様から、天然染料で染色した絹糸や加工糸を使ったものまで、さまざまな色合いや柄があります。
また、知花花織は経浮花織と縫取花織の2種類があります。経浮花織は、経糸が浮き上がった状態で模様をつくりだす織り方で、縫取花織は、経糸を数本すくって刺しゅうのように織り込む織り方です。
知花花織は、主に着物や帯、小物などに用いられています。また、近年では、洋服や雑貨など、さまざまな分野で活用されるようになってきています。
八重山上布(やえやまじょうふ)
八重山上布(やえやまじょうふ)とは、沖縄県八重山郡周辺で作られている伝統的な織物です。
苧麻(ちょま)という麻の繊維で作られた糸で織られ、古くは琉球王朝時代に貢布としても利用されてきました。
苧麻の繊維は、軽くて吸湿性や通気性に優れ、夏に着用しても涼しく快適です。
手作業で丁寧に織り上げられた、繊細で美しい織りや、琉球藍で染められた紺地に、さまざまな色合いの絣模様が特徴的です。
八重山諸島に生息する鳥や美しい海、豊かな自然を表現した柄や模様は、手で絣括り(かすりくくり)して模様を作り、織り機で織り上げます。手間と時間をかけた、貴重な織物です。
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八重山ミンサー(やえやまみんさー)
八重山ミンサー(やえやまみんさー)は、沖縄県八重山諸島で作られる伝統的な織物です。木綿糸で織られた帯で、藍色の地に五つと四つの絣模様が特徴的です。
八重山ミンサーの歴史は古く、17〜18世紀頃から織られていたと言われています。当時は、琉球王朝の貴族や上流階級の女性たちが、装飾品として身につけていました。
- 木綿糸で織られた帯
- 藍色の地に五つと四つの絣模様
- 手作業で丁寧に織り上げられた、繊細で美しい織り
八重山ミンサーの絣模様は、五つと四つで構成されています。五つは「いつの世までも」、四つは「末永く」という意味があり、幸せを願う願いが込められています。
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読谷山ミンサー(ゆんたんざみんさー)
読谷山ミンサー(ゆんたんざみんさー)は、沖縄県中頭郡読谷村周辺で作られる伝統的な織物です。ミンサーとは「細い帯」という意味で、木綿糸で織られた細帯のことを指します。
- 藍染めの地に、紅白の浮模様が特徴的
- 経糸を浮き上がらせる「グーシ花織」という織り方を用いる
- 手作業で丁寧に織り上げられた、繊細で美しい織り
グーシ花織(ぐーしばなおり)とは、読谷村で伝わる伝統的な織り方です。経糸が浮き上がった状態で模様をつくりだす織り方で、赤や青などの明るい色彩が特徴です。
また、読谷山ミンサーの模様は、大きく分けて「浮模様」と「綜絖花(そうこうはな)」の2種類があります。
浮模様は、紅白の糸で、小さな四角形や菱形などの模様を浮き上がらせます。綜絖花は、手で色糸を縫い取って、模様をつくりだす方法です。
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読谷山花織(よみたんざんはなおり)
読谷山花織(よみたんざんはなおり)は、沖縄県中頭郡読谷村で作られる伝統的な織物です。
読谷山花織の歴史は古く、18世紀頃から作られていたと言われています。当時は、読谷村の女性たちが、日常着や祝い着として身につけていました。
琉球藍で染められた紺地に、大小さまざまな花模様が浮き上がった織物です。
読谷山花織には、経浮花織(たてうきはなおり)と、手花織(てばなおり)の2種類があります。
経浮花織、経糸が浮き上がった状態で模様をつくりだす織り方です。経糸と緯糸を交互に織り上げていくのですが、経糸の一部を浮き上がらせることで、模様をつくります。
手花織は、手で色糸を縫い取って、模様をつくりだす織り方です。経糸と緯糸を交互に織り上げていくのですが、経糸の一部を、手で縫い付けられた色糸で覆い隠すことで、模様をつくります。
読谷山花織は、読谷村を象徴する貴重な織物です。その美しい織りと色彩は、見る人の心を魅了し続けています。
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南風原花織(はえばるはなおり)
南風原花織(はえばるはなおり)は、沖縄県中頭郡南風原町で作られる伝統的な織物です。
南風原花織の模様は、以下のようなものがあります。
- 浮模様:紅白の糸で、小さな四角形や菱形などの模様を浮き上がらせる
- 手花:手で色糸を縫い取って、模様をつくりだす
- 絣:経糸や緯糸を染め分けることで、模様をつくりだす
南風原花織と読谷山花織の違いは、主に以下のとおりです。
特徴 | 南風原花織 | 読谷山花織 |
---|---|---|
織り方 | 経浮花織と手花織 | 経浮花織と手花織 |
色彩 | 濃紺の地に、紅白の浮模様が特徴的 | 明るい色彩が特徴的 |
模様 | 紅白の浮模様が特徴的 | 花や草木をモチーフにした、さまざまな模様がある |
南風原花織は、経糸が浮き上がった状態で模様をつくりだす織り方が多く、濃紺の地に、紅白の浮模様が特徴的です。一方、読谷山花織は、手で色糸を縫い取って模様をつくりだす織り方が多く、明るい色彩が特徴的です。
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喜如嘉の芭蕉布(きじょかのばしょうふ)
喜如嘉の芭蕉布(きじょかのばしょうふ)は、沖縄県国頭郡大宜味村(おおぎみそん)喜如嘉(きじょか)で作られる伝統的な織物です。
- 糸芭蕉の繊維で織られる
- 琉球藍で染められた紺地に、絣模様が特徴的
- 手作業で丁寧に織り上げられた、繊細で美しい織り
喜如嘉の芭蕉布は、シマバショウという植物の繊維で織られています。シマバショウは、沖縄の亜熱帯気候に適した植物で、丈夫でしなやかな繊維を持ちます。
喜如嘉の芭蕉布の色は、琉球藍で染められています。琉球藍は、沖縄で古くから伝わる自然染料で、深く濃い藍色が特徴です。
喜如嘉の芭蕉布の模様は、絣模様が特徴的です。絣模様は、糸を染め分けることで、模様をつくりだす織り方です。喜如嘉の芭蕉布の絣模様は、さまざまな色合いがあり、その美しさは、沖縄の伝統と文化を象徴するものです。
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与那国織(よなぐにおり)
与那国織(よなぐにおり)とは、沖縄県八重山郡与那国町で作られる伝統的な織物です。
与那国織は、与那国島に自生する「与那国麻」という植物の繊維で織られます。与那国麻は、丈夫でしなやかな繊維を持ち、沖縄の伝統的な織物に用いられています。
与那国織の代表的な織り方には主に以下のものがあります。
- シダティ:板花織(いたばなおり)とも呼ばれ、与那国島に伝わる伝統的な織り方です。
- ドゥタティ:平織りの一種で、日常着として用いられていました。
- カガンヌブー:うね織りの一種で、漁網やロープなど、実用的な用途に用いられていました。
- 与那国花織:明治時代に伝わった新しい織り方で、与那国島の伝統的な模様を織り込んだものです。
与那国織は、その美しい織りと色彩から、国内外で高い評価を受けています。また、与那国島の伝統と文化を継承する、貴重な文化財としても重要視されています。