ヨーロッパでは12月に入ると街全体がクリスマスムードに包まれますが、その祝い方や価値観は国によって驚くほど異なります。本記事では「ヨーロッパ クリスマス 違い」という視点から、北欧、イギリス、南欧の代表的な国々のクリスマス文化を国別に紹介。宗教色の濃さ、家族との過ごし方、伝統行事や飾り付けなどを比較しながら、それぞれの文化的背景に迫ります。
ヨーロッパのクリスマス文化、何が違う?

12月になるとヨーロッパ各国の街は一気にクリスマスムードに包まれますが、その祝い方や重視する要素は国によって大きく異なります。同じキリスト教文化圏でも、宗教色の強さ、家族との時間の過ごし方、伝統行事の重視度などに地域性が色濃く反映されているのです。
宗教色の強さと世俗化の度合い
ヨーロッパでは、クリスマスの本来の意味である「キリストの誕生」を厳かに祝う国もあれば、宗教的な意味合いよりも家族の団らんやプレゼント交換といった世俗的な側面を重視する国もあります。
例えば、ポーランドやスペイン、イタリアなどのカトリック圏では、クリスマス・イヴには教会でのミサに参加し、家族全員で神聖な食卓を囲むのが伝統です。特にポーランドでは「ヴギリヤ(Wigilia)」というクリスマス・イヴのディナーが重視され、肉を使わず、12皿の料理が出されるのが一般的です。
一方、イギリスやフランス、ドイツでは、宗教色は徐々に薄れつつあり、マーケットや飾りつけ、家族での楽しい時間に重きが置かれています。特に北ヨーロッパではルター派や福音派の影響で、より控えめながらも温かな祝福の形が見られます。
家族との時間 vs 友人・街との交流
国によって、誰と過ごすかも大きな違いがあります。
ドイツや北欧諸国では「家族第一」の精神が色濃く、12月24日から26日までは親族と静かに過ごすのが一般的です。特にフィンランドやノルウェーでは、家庭の中での過ごし方が重視され、テレビ番組やボードゲームなど、家庭内の団らんに集中する傾向があります。
一方、イギリスやオランダ、フランスの都市部では、家族と過ごすのはもちろんですが、友人や同僚との「クリスマスパーティー」文化も盛ん。街中のパブやレストランでは、12月中旬から「クリスマス・ドリンク」や「プレゼント交換イベント」が数多く開催され、職場やコミュニティでのつながりが重視されます。
伝統行事の重視度の違い(教会/祭り/飾り付けなど)
ヨーロッパ各地では、クリスマスに関連する伝統的な行事が今も息づいていますが、重視される要素は国によってバラバラです。
**スペインでは「三賢人の行進(1月6日)」が大イベントとして知られ、サンタクロースよりもこちらの方が子どもたちに人気です。イタリアのナポリでは「プレゼピオ」と呼ばれる手作りのキリスト生誕シーン(クリブ)**を飾る文化があり、宗教芸術としての意味合いも強く残っています。
対して、ドイツやオーストリアでは「クリスマスマーケット」や「アドベントカレンダー」など、視覚的な飾りつけと祭りの雰囲気が重要視され、伝統的な装飾やキャンドル、スパイス香るホットワインなどで街が彩られます。
こうした違いを見ていくと、「クリスマス」という言葉ひとつにも、地域ごとの価値観や文化的背景が凝縮されていることが分かります。
北欧のクリスマス|静寂と光を尊ぶ伝統文化

北欧のクリスマスには、他のヨーロッパ諸国とは異なる静けさと精神性があります。雪と闇が長く続く冬だからこそ、光やぬくもりの象徴としてのクリスマス文化が特別な意味を持つのです。スウェーデンやフィンランドなどでは、賑やかさよりも心の安らぎや自然との調和が大切にされています。
ルチア祭と「光の女神」の行進(スウェーデン)
スウェーデンのクリスマスシーズンの幕開けを告げるのが12月13日の「ルチア祭」。
白いローブを着て、頭にキャンドルの冠を乗せた少女が「光の聖女ルチア」に扮し、歌を歌いながら行進する伝統行事です。ルチアは闇に光をもたらす存在とされ、冬の長い北欧にとって希望の象徴となっています。
この行事は学校や職場、教会などあらゆる場所で行われ、パン「ルッセカット」やジンジャービスケットなどの伝統的なお菓子も登場します。宗教行事でありながら、世俗的な文化としても広く親しまれているのがスウェーデンらしい特徴です。
キャンドル文化と“心のあかり”(フィンランド)
フィンランドでは、「静けさ」の中で祝うクリスマスが特徴的です。“Joulu(ヨウル)”と呼ばれるクリスマスは、家庭の中での過ごし方が最も重要視されます。特に印象的なのが、窓辺に灯されたキャンドルライト。
フィンランド人にとって、キャンドルは単なる装飾ではなく、心のあかりや内面の静寂を象徴するものです。
また、サウナを家族で楽しんだ後に、ゆったりとしたディナーを取るのが定番。サンタクロースがラップランドに住んでいるとされていることもあり、自然や神話とのつながりを感じながら過ごす時間が大切にされます。
ユール(Yule)の精神と自然とのつながり
北欧のクリスマス文化のルーツは、実はキリスト教以前の**ゲルマン系の「ユール(Yule)」**という冬至の祭りに遡ります。冬の終わりと新しい太陽の誕生を祝うこの祭りは、自然のリズムと密接に結びついており、現在のクリスマス文化にもその影響が色濃く残っています。
たとえば、木製の装飾やトナカイのモチーフ、森の香りを感じさせるリースやツリーなどは、すべて自然とのつながりを象徴しています。現代の北欧でも、この「ユール」の精神が根底にあり、都市部であっても自然や静けさを取り入れるライフスタイルが根付いています。
イギリスのクリスマス|音楽と紅茶とジャンパーの祝日

イギリスのクリスマスは、音楽と文学の伝統、そしてティー文化とユーモアに満ちた独特の雰囲気があります。ヴィクトリア朝時代に現在のスタイルが確立されたと言われ、古き良き伝統とモダンな楽しみ方が融合したスタイルです。
キャロルとクリスマス・キャロル文化
イギリスのクリスマスといえば、やはり**「キャロル」。教会や街角で歌われる「O Holy Night」や「Hark! The Herald Angels Sing」**などの伝統的な賛美歌は、まさにこの季節の風物詩です。
また、チャールズ・ディケンズの名作『クリスマス・キャロル』が影響を与えたこともあり、キャロルは宗教と文学、そして社会的メッセージを融合した文化として親しまれています。
子どもたちが家々を訪れて歌う「キャロリング」も復活傾向にあり、イギリス全土で地域の絆を感じられるイベントとして注目されています。
紅茶とミンスパイのティータイム
寒い冬の日の午後には、温かい紅茶と甘いミンスパイ(ドライフルーツとスパイスの詰まった小さなタルト)でティータイムを楽しむのがイギリス流。クリスマスは紅茶文化の真骨頂とも言える季節で、ミルクティーとシナモンの香りが家庭を包み込みます。
また、クリスマスケーキやプディングなど、紅茶に合う伝統的なスイーツも多く、家族や友人と囲むお茶の時間は、静かな幸福感を味わえる特別なひとときです。
ユーモアあふれる“クリスマスジャンパー文化”
イギリスでは、12月に入ると**「クリスマスジャンパー」と呼ばれる奇抜でユーモラスなセーターを着るのが人気です。トナカイや雪だるま、光るLED付きのデザインまでさまざま。「クリスマス・ジャンパー・デー」**には職場や学校でこのセーターを着てチャリティーに参加する文化もあり、イギリス人らしいウィットと社会貢献精神が表れています。
アイルランドのクリスマス|教会とパブがつなぐ人の輪

聖ステファンの日とは?
アイルランドのクリスマスは12月25日だけで終わりません。翌日26日は「聖ステファンの日(St. Stephen’s Day)」として祝われ、人々はこの日も休暇を楽しみます。キリスト教最初の殉教者・聖ステファンを記念するこの日は、チャリティ活動や家族の集まり、ハンティングの行事などが行われ、地域によっては「ワレン・ボーイズ(Wren Boys)」という伝統的な仮装行列も見られます。
教会の重要性と家族との祈り
アイルランドでは今もクリスマス・ミサに参加する文化が根強く残っています。多くの家庭では、24日の深夜に行われる「ミッドナイト・ミサ」に家族そろって参加し、キリストの誕生を神聖なものとして迎える習慣があります。ミサのあと、家に戻ってキャンドルを灯しながら静かに祝うという、心のこもった時間が流れます。
クリスマスの夜に集うパブ文化
一方で、アイルランドならではのクリスマス文化として知られるのが**「パブ文化」です。多くの人が地元のパブに集まり、旧友や親戚との再会を楽しむのが恒例。教会での静謐な時間とは対照的に、パブでは音楽や会話が弾み、人とのつながりを祝う場になっています。“教会とパブが共存する”アイルランドのクリスマスは、他国にはないユニークなバランス**を保っています。
EU諸国のクリスマス|ドイツ・フランス・イタリアなどの特徴

ドイツ:アドベントカレンダーとクリスマスマーケット
ドイツのクリスマスといえば、アドベントカレンダーとクリスマスマーケット。12月に入ると、子どもたちは日ごとに扉を開けてお菓子や小物を楽しみ、街には伝統的なマーケットが並びます。グリューワイン(ホットワイン)や焼きソーセージ、木製オーナメントなどが売られ、商業と伝統が美しく融合した空間が広がります。
フランス:ミサとビュッシュ・ド・ノエル
フランスでは教会でのミサに加え、食卓を彩るのが「ビュッシュ・ド・ノエル」という薪を模したロールケーキです。12月24日の夜は「レヴェイヨン(Reveillon)」と呼ばれる夜遅くまで続く豪華な食事会が開かれ、家族とともに過ごします。また、パリや地方の教会ではクリスマスの荘厳な音楽が響くミサも多く、伝統が根付いています。
イタリア:プレゼピオ文化と“聖夜の魚料理”
イタリアでは、クリスマスツリーよりも**「プレゼピオ(Presepio)」と呼ばれるキリスト誕生のジオラマ(馬小屋の再現)が各地で飾られます。中でもナポリはプレゼピオの聖地として知られ、職人による緻密なミニチュア作りが人気。また、24日の夜は「聖なる断食」として肉を避け、魚料理で祝う家庭が多い**のも特徴です。
国によってこんなに違う!ヨーロッパの“クリスマス観”まとめ

静寂 vs にぎわい|「静かな夜」は本当に静か?
「きよしこの夜」のイメージとは裏腹に、実際のクリスマスの過ごし方は国によって大きく異なります。北欧やアイルランドでは“静寂と祈り”を大切にし、教会での時間を重視します。一方、ドイツやフランス、イギリスでは、音楽・マーケット・パーティなどにぎやかな側面も。同じ「Silent Night」でも、文化的背景によってその意味合いが変わってくるのです。
宗教的クリスマス vs 商業的クリスマス
伝統的なカトリック・プロテスタント文化が色濃い国では、今なお宗教的なクリスマスが中心です。ミサへの参加や家族との祈りなど、**“信仰に基づく時間”**が大切にされます。一方で、イギリスやドイツなどでは、商業的なイベントやプレゼント文化、イルミネーションなどが前面に出る傾向も。国民性や宗教観が色濃く表れるポイントです。
日本との違いは?
日本では、クリスマスは**恋人や友人と過ごす“ロマンチックなイベント”**としての側面が強く、宗教的意味合いはほとんど見られません。また、ケーキやチキンといった独自の習慣が浸透しています。ヨーロッパとの一番の違いは“家族と祈りの時間”の有無。その違いを知ることで、海外のクリスマスに対する理解が深まります。
旅行前に知っておきたい「その国らしい」クリスマスの過ごし方

おすすめの体験(ミサ、行進、マーケットなど)
ヨーロッパ旅行中に体験できる“その国らしさ”満載のイベントとしては:
- スウェーデンのルチア祭の行進(12月13日)
- ドイツのクリスマスマーケット巡り
- フランスでの深夜ミサとレヴェイヨン
- イギリスのキャロルコンサート
- アイルランドのパブでのクリスマスナイト
など、国ごとに異なる楽しみ方があります。
文化理解で“違いを楽しむ”クリスマス旅のヒント
旅行者として大切なのは、その国の文化を**“体験する心構え”。宗教行事への参加時には静粛を守り、地元の人と交流する場では礼儀を大切にする**こと。違いを知り、尊重しながら旅をすることで、クリスマスの本当の意味や喜びが見えてくるでしょう。
【比較表】ヨーロッパのクリスマス文化:主な国別比較
国名 | 宗教的要素 | 家族との過ごし方 | 公共イベント(祭り・市) | 特徴的な習慣 |
---|---|---|---|---|
スウェーデン | 強い | 家族と祈りと歌 | ルチア祭の行進 | 白いローブの行進、光の女神 |
フィンランド | 中〜強 | 静かな時間 | キャンドルや聖夜の灯火 | サウナとキャンドル |
イギリス | 中 | 家族でパーティ | キャロル、マーケット | クリスマスジャンパー |
アイルランド | 強い | 教会と家族 | パブでの再会、ワレン行列 | 教会とパブ文化の共存 |
ドイツ | 中 | 家族+公共 | マーケット、音楽イベント | アドベントカレンダー |
フランス | 中〜強 | 家族の晩餐とミサ | 教会でのミサ、イルミネ | ビュッシュ・ド・ノエル |
イタリア | 強い | 家族と断食の夜 | プレゼピオ展示 | 魚料理、ジオラマ |
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