イギリスの雨の日ファッションというと、トレンチコートに傘を差したロンドンの街並みを思い浮かべる人も多いかもしれません。
けれど、実際にイギリス北部やアイルランド周辺で暮らしてみると、もう少し“現実的”で合理的な雨文化が見えてきます。
小雨程度ならそのまま歩く。
どうせまたすぐ降るから、フード付きのジャケットで済ませる。
大きめのマフラーを巻いて、防水ブーツで出かける。
そんな「雨と共存する暮らし」が、ごく自然に根付いています。
本記事では、ロンドンの観光イメージとは少し違う、シェフィールド周辺をはじめとした英国北部やアイルランド寄りのリアルな雨の日ファッションや生活感覚について紹介します。
「どうせまた降る」英国北部の雨文化|傘をあまりささない理由

ロンドンは地下鉄(Tube)と徒歩移動が中心で、外を歩く時間が長いため傘を使う人も多く見られます。
一方、英国北部の地方都市では車移動が基本です。
家から車、車から目的地という移動が多く、短時間の雨であれば傘を開く必要はほとんどありません。
とはいえ傘を持たないわけではなく、車の中にはしっかりとしたお洒落な傘が一本入っていることも多く、いわば“必需品として常備されている”ような感覚です。
傘ささずにフードかぶる文化、どうせ濡れる前提の服選び。

英国北部やアイルランドの雨は、日本のように「ザーザーと激しく降る」というよりも、強い風と一緒に小雨が横から吹き付けるような天気が特徴です。
そのため傘よりも、フード付きのジャケットやパーカーで対応するのが一般的です。
軽い雨ならそのまま歩き、スーパーに入れば急に暑くなる。そんな気温差の中で日常が回っています。
また、パブ帰りの夜でも多少の寒さは気にせず外に立って話し続けるなど、天候に対してかなり“割り切った”暮らし方が根づいています。
特にアイルランド寄りの地域では風が頬に刺さるように強いことも多く、首元を守る大きめのマフラーや、顔まわりをすっぽり覆える防寒アイテムが重宝されます。
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ロンドンのトレンチコート文化と、北部のリアルな距離感

ロンドンのシティ(金融街)やチェルシー、ノッティングヒル周辺では、バーバリーのトレンチコートは今でも日常的に見られます。特に通勤時間帯には、きちんとした装いの一部としてトレンチを着ている人も少なくありません。
文化的にも「きちんとした雨具=傘よりトレンチ」という意識が、上流〜中上流層の間では今も残っています。
ただしこれはイギリス全体に広がるスタイルというよりも、ロンドン南西部や中心部の一部エリア、ある程度の所得層、そして通勤やビジネスシーンという条件が重なった、かなり限定的な文化です。
そのため、マンチェスターやシェフィールドといった北部の日常とは、かなり異なる風景になります。
だからこそ、北部〜アイルランドあたりでトレンチコートを着ている人を見ると、「ロンドンの本社の人来たのかな?!」と少し目立って見えることがあります。どこか垢ぬけていて、少し“都会的な匂い”を感じる存在です。
実際の地方生活では、そうしたフォーマルな装いよりも、変わりやすい天候に耐えられる実用的な服装が好まれます。
「雨の日は服で対処する」という考え方(思想)

英国北部やアイルランドでは、雨は“特別な出来事”というよりも日常の一部です。
そのため「傘で完全に防ぐ」という発想よりも、「濡れても困らない服を選ぶ」という考え方が自然に根づいています。軽い防水ジャケットやフード付きのパーカーは、その前提で作られた存在です。
天気が変わりやすく風も強い地域では、傘を持ち歩くよりも、両手を空けて身軽でいられることの方が重要になります。
その結果、トレンチコートのような“整った雨具”は、機能というよりも都市的な記号(ロンドンらしさの象徴)に近い存在です。実際の地方生活では、もっと現実的でラフな服装が選ばれています。
最近のストリートでは、北欧ブランドのアウトドアジャケットなどが好まれていることも多く、こうした「天候に合わせて服で調整する」という実用的な感覚と相性がいいのかもしれません。
量販店「Primark」が支える日常のリアル(生活)

そうした“実用的な服選び”を支えているのが、Primark(プライマーク)のような量販店です。
実はアイルランド発祥(現地名はPenneys)であるPrimarkは、イギリスやアイルランド各地に展開する大規模なファストファッションブランドで、日常着を手頃な価格で揃えられることが特徴です。特に北部の都市では、ジャケットやニット、冬用コートなどを「まずここで揃える」という感覚がかなり一般的です。
高価な一着を長く着るというよりも、必要なときに必要なものを気軽に買い足すという発想に近いと言えます。デザインもシンプルなものから流行を取り入れたものまで幅広く、“日常に馴染む服”が中心です。
しっかり防寒できて見た目もそこそこ整うアイテムが、自然と生活の中に溶け込んでいく──。その結果、北部の雨の日ファッションは、高級ブランドで固めるというよりも、実用性とコストのバランスを取りながら現実的に組み立てられています。
上半身はPrimarkのラフなジャケットなのに、足元だけはしっかりとHUNTER(ハンター)のレインブーツ――。
北部の街を歩いていると、そんな“実用とこだわりの混在”したスタイルによく出会います。
なぜイギリスの雨といえば「HUNTER」なのか
1856年創業のHUNTERは、イギリスの雨文化を語るうえで欠かせない老舗ブランドです。
第二次世界大戦中には軍用ブーツを大量生産し、その耐久性と防水性の高さが広く知られるようになりました。
その後、エリザベス女王をはじめとする王室からロイヤルワラント(王室御用達)の称号を授与され、品質の高さが象徴的に評価されています。
ロンドンの都市部ではファッションアイテムとしての側面も強い一方で、坂道が多く天候の厳しい北部やアイルランドでは、より実用的な「生活の道具」として根づいています。
高級ブーツ×日常着の“合理的なおしゃれ”
HUNTERのブーツは決して安価なアイテムではありません。それでも地方で広く選ばれているのは、長く使える耐久性と信頼性があるからです。
服はPrimarkのような手頃なもので現実的に整えつつ、足元だけは冷たい雨や泥からしっかり守るためにHUNTERを選ぶ。
このように、日常着の中に一点だけ“本気の機能性”を組み込むスタイルは、北部の人々の暮らし方をよく表しています。
飾りすぎず、必要なところにはしっかり投資する。そのバランス感覚こそが、英国北部の雨の日ファッションのひとつの完成形です。
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