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アイルランドのSt. Stephen’s Day|冬の食卓と“レンの祝祭”の伝統

Spiritual

クリスマスの翌日、アイルランドでは「St. Stephen’s Day(訳:セント・スティーブンス・デイ、または聖ステファノの日)」と呼ばれる特別な日が訪れます。

家族で静かに過ごす時間に加えて、仮装をした人々が町をめぐる“Wren Day(レン・デイ)”の風習が根強く残るこの日は、イギリスの“Boxing Day”とは一味違う、アイルランドならではの文化が息づいています。今回は、この日の歴史的背景や、食卓に並ぶ料理、地域ごとの風習までを、写真が浮かぶような語り口でご紹介します。

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St. Stephen’s Dayとは?

アイルランドでの位置づけ(祝日の一部として)

12月26日、アイルランドでは「St. Stephen’s Day(聖ステファノの日)」として公的な祝日に定められています。
これはクリスマス(12月25日)の翌日にあたる日であり、ホリデーシーズンの余韻を残しながら、家族や地域社会とのつながりを大切に過ごす日とされています。

この日は、多くの人が仕事を休み、前日のごちそうの残りでブランチを楽しんだり、冬の森を散策したりと、静かでスピリチュアルな時間が流れる日でもあります。都市部では買い物を楽しむ人もいますが、本来の意味を大切にする人々の間では、「感謝と祈り」の日として受けとめられています。

  • “St.” は “Saint(聖人)” の略 → 聖〇〇
  • Stephen(スティーブン) は聖書に登場する初代殉教者ステファノのこと
  • 「Day」は“日”、“記念日”という意味なので
     →「スティーブン聖人の日」や「聖ステファノの日」と訳されます。

イギリスのBoxing Dayとの違い

同じ12月26日、イギリスでは「Boxing Day」として知られています。これは元々、使用人や貧しい人々に贈り物(ボックス)を渡す習慣に由来し、今日では主にセール開始日やスポーツ観戦の日として認識されています。

一方、アイルランドのSt. Stephen’s Dayは、キリスト教とケルト文化が交差する独自の風習が色濃く残っており、Wren Day(レンの祝祭)というユニークな伝統行事を含んでいます。

この点で、イギリスとアイルランドの12月26日は、表面は似ていても、文化的な背景や精神性が大きく異なるといえるでしょう。

キリスト教の聖人ステファノへの由来

この日の名前の由来は、初期キリスト教会の殉教者「聖ステファノ(Stephen)」にあります。聖ステファノは貧しい人々への奉仕を行ったことで知られ、使徒行伝によれば、キリスト教の信仰のために石打ちの刑にされた最初の殉教者とされています。

アイルランドのSt. Stephen’s Dayには、彼のように「弱き者への共感」「奉仕の精神」を大切にする意味が込められており、これが後述するレンの祝祭(Wren Day)に通じる、民衆の文化や助け合いの風習とも深く結びついています。

Wren Day:レンの祝祭とは

小鳥(レン)とケルト神話の象徴

「Wren(レン)」とは、ヨーロッパコマドリに似た小さな鳥の名前です。ケルト神話において、この鳥は知恵と予言の象徴とされ、同時に古い年を終わらせる存在としても知られてきました。

冬至を過ぎ、太陽の力が少しずつ戻ってくるこの時期、レンは「去りゆく年を運ぶ鳥」として、生命の循環と再生の象徴とされていたのです。かつてはこの鳥を象徴的に“狩る”ことで、新たな年への希望と浄化の儀式とされてきました。

子どもや若者が仮装して町を練り歩く風習

この神話的背景から派生したのが、「Wren Boys」と呼ばれる仮装行列。
子どもや若者たちはカラフルな衣装や藁の衣装をまとい、顔をペイントしたり仮面をつけたりして、太鼓やフィドルを鳴らしながら町を練り歩くというものです。

彼らは伝統的な歌 “The Wren Song” を歌いながら、各家庭を訪ねて小銭やお菓子をもらい、地域に祝福と賑わいをもたらす存在になります。

これは「レンを狩り、歌で葬送する」という古いケルト的儀式の名残であり、今では祝祭と音楽、地域の絆を象徴する風景となっています。

音楽・歌・募金活動としての社会的意味

近年では、この仮装行列は単なる娯楽にとどまらず、地域のチャリティ活動や募金活動の一環として行われることも多くなっています。

子どもたちが集めたお金は、地元の福祉団体や困っている家庭に寄付されることもあり、「聖ステファノの精神=奉仕と分かち合い」が今も生きている証です。

このように、Wren Dayは「古代ケルトの再生神話」と「キリスト教の慈愛精神」が交差した、スピリチュアルな祝祭日なのです。

地域ごとの違い(特に南西部で色濃く残る)

この伝統はアイルランド全土で知られていますが、特に南西部(ケリー県やリムリック県など)では今でも盛大に祝われています。

トラリーやディングルといった町では、今なお大規模なWren Dayフェスティバルが開催されており、観光資源としても注目されています。

一方、都市部ではやや縮小傾向にあるものの、学校の授業や地域行事でこの風習を学ぶ取り組みも続いており、ケルト的な「魂の記憶」を現代へとつなぐ日となっているのです。

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アイルランドの冬の家庭料理

St. Stephen’s Dayの食卓には、日常と祝祭が溶け合ったような温かな料理が並びます。クリスマスのごちそうを食べ尽くすというより、残り物をリメイクして、日常へとやさしく戻る…そんな“切り替え”を感じさせるのがこの日の食文化です。

colcannon(マッシュポテト+ケール)

アイルランドの冬の定番といえば、colcannon(コルキャノン)
マッシュポテトにたっぷりのケールやキャベツ、時にはベーコンやネギを加えた素朴な料理です。滋味深い味わいと優しい温もりで、クリスマスの豪華なごちそうのあとにはぴったりの一皿。

colcannonは、ケルト時代から伝わる料理とも言われており、“土地とつながる”冬の料理として今も広く愛されています。

クリスマスの残り物で作るsteak pieやキャセロール

クリスマスディナーで余った肉や野菜を使って作るのが、steak pie(ステーキパイ)やビーフキャセロール
サクサクのパイ生地に包まれた濃厚なビーフとグレイビーの組み合わせは、寒い冬に心も体も温まるごちそうです。

「残り物」とはいえ、そこには工夫とぬくもり、家庭の記憶が詰まっているのがアイルランドらしさ。冷蔵庫にあるもので新たな一品を生み出す、この日ならではの楽しみです。

チーズやチャツネ、パンなどの軽食とティー

午後には、紅茶と一緒に軽食を囲む時間がやってきます。クリスマスにも登場した地元のクラフトチーズや、濃厚なチャツネ(果実のスパイス煮込み)、サワードウブレッドやソーダブレッドが再びテーブルへ。

食事というよりも、「おしゃべりと温もりを共有するティータイム」として、家族が穏やかに集まる瞬間です。

冬に飲まれるホットウィスキーや紅茶

夜が深まるにつれ、ホットウィスキーが登場するのもこの時期ならでは。
アイリッシュウィスキーにクローブを刺したレモンと熱湯を加え、蜂蜜で甘さを調整する伝統的なドリンクで、風邪予防としても飲まれてきました

また、紅茶(ブラックティー)に少しミルクを加えたアイルランド式の「お茶時間」も、夕暮れからの静けさに寄り添います。心がほっと落ち着くこの時間こそが、St. Stephen’s Dayの真骨頂といえるかもしれません。

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家族で過ごす「静かな日」

St. Stephen’s Dayのもうひとつの顔は、「何もしないことの贅沢」を味わう日という点です。

外出は控えめ、家でゆっくりする人が多い

この日は多くの家庭で、テレビを見たり、本を読んだり、家族とボードゲームをしたりと、静かに過ごすことが習慣となっています。外が寒くても、家の中で過ごす時間が“豊かさ”になる——それがアイルランドの冬の日常です。

特に高齢の家族がいる家庭では、人混みを避け、あえて出かけない選択をすることで、ゆったりとした時間を確保する傾向があります。

パブ文化とスポーツ観戦(サッカーや競馬)も定番

一方で、男性陣や若者たちは近所のパブで一杯飲み交わしたり、伝統のサッカーマッチや競馬中継を観戦するのもSt. Stephen’s Dayの恒例です。

アイルランドではこの日、Leopardstownという競馬場で大きなレースが開催されるため、スポーツ好きな人々にとっては一年の楽しみのひとつ。
パブでの会話や地元の笑い声が、ホリデーの温かなエネルギーをもう一度蘇らせてくれるのです。

「賑やかさ」のあとに訪れる、癒しの時間

クリスマスのきらびやかさの余韻を感じつつも、St. Stephen’s Dayはその反動のような、「静けさと内省の時間」でもあります。
忙しく華やかだった数日を経て、少しずつ現実へと戻っていく、その“間”にあるやさしい緩衝日
なのです。

アイルランドではこの日を「自分に戻る日」「心を整える日」と表現する人もおり、ケルト文化がもともと大切にしてきた“内面の静けさ”や“自然との調和”**が、今もこの日に息づいているのかもしれません。

St. Stephen’s Dayが今に伝えるもの

  • 祝祭と食の結びつき」は、今も人々の記憶と感情をつなげている。
  • Wren Dayのような風習が教えてくれるのは、「共同体の力、音楽の力」。
  • そして、現代の生活のなかでも、「冬の静けさと、自然や歴史と共に過ごす知恵」を思い出させてくれる日──。

St. Stephen’s Dayは、ケルトとキリスト教、過去と現在が交わる、アイルランドならではの“静かなる祝祭”です。

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