鮮烈な色彩とドラマチックなシルエットで1980〜90年代のファッション界を席巻したクリスチャン・ラクロワ。”商業的成功”以上に人々の心に残る”美の記憶”を創り出した彼の軌跡と、現代におけるブランドの再評価、そして芸術と服づくりを一体化させた世界観に迫ります。
クリスチャン・ラクロワのプロフィール

基本情報
- 名前: Christian Lacroix(クリスチャン・ラクロワ)
- 生年月日: 1951年5月16日
- 出身地: フランス・アルル
- 学歴: ソルボンヌ大学(美術史専攻)→ ルーヴル美術館付属の博物館学専門学校
スタイルの特徴
クリスチャン・ラクロワのデザインは、バロック風のディテールや舞台的な演出が特徴的です。彼の作品は、鮮やかな色使いと異素材のミックスで、民族衣装や歴史衣装からの着想を得て、非日常的で幻想的な美学を具現化しています。これらのスタイルは、しばしば服をただの衣服ではなく、芸術作品として捉える独自の視点を反映しています。
クリスチャン・ラクロワのブランドの歴史
- 1951年フランス・アルルに生まれる
- 1981年ジャン・パトゥのデザイナーに就任
- 1987年自身のブランド「クリスチャン・ラクロワ」を創設(LVMHの支援)
- 1988年プレタポルテラインを開始
- 1989年アクセサリーや香水など幅広い展開へ
- 2005年LVMHからFalic Groupにブランド売却
- 2009年経営破綻によりオートクチュール部門終了
- 2012年Desigualとのコラボレーションがスタート
- 2024年スペイン企業「STL」がブランドを買収、再始動の動き
ブランドの展開とその背景
クリスチャン・ラクロワは、1980年代後半から1990年代にかけて、鮮烈な色彩とドラマチックなシルエットでファッション界を席巻しました。その後、ブランドは商業的な課題に直面し、2009年には経営破綻を迎えました。しかし、ラクロワの美学は消えることなく、Desigualとのコラボレーションを通じて現代のファッションにも影響を与え続けています。
ラクロワの哲学と世界観:芸術としてのファッション

出典:楽天市場
服=夢を届けるメディア
クリスチャン・ラクロワにとって、ファッションは日常を離れた「夢」や「物語」をまとう行為でした。彼のデザインは、単なる衣服ではなく、「装飾的でありながら知的なビジュアルの叙事詩」として見ることができます。ラクロワの服は、常に舞台衣装のような存在感を放ち、視覚的にも精神的にも観る者を魅了しました。
反商業主義と独自性
ラクロワは商業主義に対して反発し、流行に左右されることなく「自分にしか創れないもの」を追求しました。これは大量消費に流れがちな現代のファッション業界に対するアンチテーゼとしても評価され、サステナブルファッションを重視する現代のトレンドとも共鳴しています。
Desigual × Christian Lacroix:現代に蘇る美意識

出典:楽天市場
どんなコラボ?
2012年から始まったDesigualとのコラボレーションは、ラクロワの幻想的な装飾美とDesigualの遊び心が見事に融合しています。このコラボにより、ラクロワのデザインはより身近で現代的なファッションとして再解釈され、幅広い層に支持されるようになりました。
2023年秋冬コレクションの特徴
- 黒地×ネオンカラーの大胆プリント
- 鉱物、花、空想生物をモチーフにした世界観
- チュールシャツやファーコートなど、多彩なアイテム展開
2024年春「On the Move」コレクション
- キュビスムを思わせる抽象的構成
- デジタル技術を駆使したコラージュやズーム効果
- ラクロワならではの絢爛さと現代感が融合したデザイン
2009年、ブランドの終焉とその後

経営破綻の背景
2009年、リーマンショック後の経済不況の影響を受け、ラクロワのブランドは破産しました。ラクロワ自身は、この時の声明で「創造性が利益を生まない世界で、芸術としてのファッションはどうあるべきか」と問いかけ、その哲学がより一層注目を浴びました。
オートクチュールの終了と再編
オートクチュール部門とプレタポルテ部門が終了した後、ブランドはライセンスビジネスに転換。ラクロワは香水やステーショナリーのデザインに移行し、舞台美術やインテリアの分野でも活動を続けました。
現在のラクロワ:再評価とブランドの未来

Sociedad Textil Lonia(STL)による再始動
2024年、スペインのアパレル企業STLがブランドを買収し、新たな展開を開始しています。Desigualとのコラボレーションも含め、ラクロワの美学は現代のファッションシーンに再登場し、より多くの消費者にアピールしています。
未来の展望
- 舞台衣装・ホテル内装・インテリアへの展開拡大: ラクロワのデザインは今後、さらなる領域へと広がりを見せる予定です。
- サステナブルファッションとの親和性: 環境に優しいファッションやエコ意識の高まりとともに、ラクロワの美学は新たな形で再評価されています。
- 芸術的ブランドとしての確立: 彼の「芸術としてのファッション」という哲学は、次世代のデザイナーたちにも影響を与え続けており、ラクロワ自身の位置づけも再評価されています。
まとめ

クリスチャン・ラクロワは、単なるファッションデザイナーではなく、芸術と物語をファッションというメディアに落とし込んだ真の表現者でした。彼の創造した服は、ただの衣服以上のもの—夢と物語を纏ったアート—として今なお多くの人々に影響を与えています。
Desigualとのコラボをはじめとする新たな展開を経て、彼の美学は現代のファッションに再び光を放っています。今後の展開にも大いに注目が集まります。